ヘルメ ハイネ作 1976年 オーストリア
まずハイネの他の作品(「Friends」等)をご覧になったことのある方は、「これがハイネ?」とびっくりされることと思います。さまざまな美しい色と模様を持つ切り絵を使ったこの作品は、他のハイネの代表作とはまったく違っています。個人的には、こちらの作風のほうが断然好きです。
王様には、わらったり、遊んだりするひまなんて、ぜんぜんありませんでした。 毎日毎日、山のようなしごとを しなければならなかったからです。
そんなわけで、王様には、ひとりの友達もありませんでした。
友達もなく、毎日仕事に追われ、国の心配ばかりしている王様のたったひとつの気晴らしは、夜中こっそりベットの上で飛び跳ねることです。ベットの上で、ボヨーン、バヨーンとやっているうちに、心の中の心配事がすっかり消えて、すやすやと眠ることが出来るのです。
ところがある晩、いじわるな大臣に、王様が楽しそうに飛び跳ねているところを、偶然のぞかれてしまいます。



だれもが、王様のくせにベットではねまわったりするなんて、とってもおかしい、と言いました。
「王様ともあろうものが....」 うわさはあっという間に国中に流れます。
家来たちは王様にせまって、「何者もベットの上で飛び跳ねてはならない」というおふれを出させます。
たったひとつの気晴らしもなくなってしまった王様は、つらくて、悲しくて、とうとう重い病気になってしまいます。どんなえらいお医者様も直せません。王様は大臣たちに最後のお願いをしました。
「どうかもう一度だけ、ベットの上ではねさせておくれ」
大臣たちは王様の体を持ち上げると、ベットの柱の上にそっと下ろしました。
するとどうでしょう!王様はベットに身を躍らせると、いかにもうれしそうに、ボヨーン、ボヨーンと飛び跳ねはじめたではありませんか。あっけにとられたみんなの前で、王様はひと跳ねごとに元気になっていきました。
(ランプのかさが、ぶどうの模様なのです。どっかの雑誌から切りぬいたのかな、とほほえましくなります)
あんまり王様が楽しそうなので、とうとうお医者様も大臣たちも我慢し切れなくなって、いっしょに飛び跳ね始めました。そして...
しまいには、国中がひとり残らず、ボヨーン、ボヨーンととびはねていたのです! だれもがわらい、口々にうれしそうにさけびました。
「王様、バンザイ! ボヨンボヨン大王、バンザーイ!!」
色も模様も本当にきれいでしよう?王様のベットのはっきりした黄色と茶、、全体的に地味な色調の中にきかせたきれいなブルーや紫。(実際はこの画面で見るよりずっときれいで鮮やかな色です。上のちょび髭のおじさんの水色と黄緑の服なんて、とてもいい色です) 切り絵ならではの単純なかわいらしい登場人物たちが、またいい顔をしているんです。後ろ姿や背中の感じもいいでしょう?。余白の使い方もとても上手です。
私は、切り絵やクロスステッチで作られた絵本が、とても好きです。素材の性質上、単純で素朴なものが出来るので、人や動物の表情がすごくいいし、格好もほほえましいです。色がすごくきれいなものが多いのもいいですね。
話しはずれますが、切り絵で出来た仕掛け絵本で、サブタという人の「12
Days of Christmas」という本があります。緑と白の地味めな表紙ですが、内容はすばらしいです。おととしくらいに和訳も出版され、とてもよく売れているので、ご覧になった方も多いかと思います。真っ白な切り絵のしかけの輪がくるくる回ったり、雪をふらせたり、最初に見たとき、本当にはっと息を呑んでしまいました。中は白一色です。以前の仕事の関係で、かなりの量の新旧の絵本を見てきましたが、あんなにきれいなしかけ絵本ははじめてで、今までのしかけものとはまったく違った印象でした。同じ作者の「Christmas
Alphabet」もきれいです。
切り絵について、まだ書きたいことがありますが、長くなりすぎたので、また別のところでにします。
この本は以前、佑学社から「王様はとびはねるのがすき」という題で和訳が出ていましたが、残念ながら絶版となってしまい、現在書店では手に入りません。私の手元にあるのは、アメリカの翻訳版ですが、オリジナルはオーストリアです。ただしこのアメリカ版もかなり昔のもので、現在ヘイネのタイトルを出版している米英両国の出版社からも出ていないことからみても、おそらく絶版になってしまったと思われます。こんなにいい本が絶版なんて、本当に惜しいことです。どなたか再版していただけないでしょうか?