文 渡辺茂男 絵 山本忠敬 1963年 福音館
前出の「きかんしゃ やえもん」をお子さんに読んであげているうちに、渡辺さんの中に生まれたのが、この「しょうぼうじどうしゃ じぷた」です。
じぷたは払い下げのジープを改良したちびっこ消防車です。はしご車ののっぽくんや、高圧車のぱんぷくん、救急車のいちもくさんといっしょに、まちの消防署で働いています。のっぽくんたちは、大きな火事があれば、三台そろって飛び出して、大活躍をします。ところがじぷたはちびっこですから、サイレンも小さくて、「ぷーぷー」としか鳴りません。 それを聞いて、のっぽくんたちは「ぷーぷーなんて言って、あれでもいさましいつもりなんだね」なんてばかにします。じぷたもみんなの横で、ちっぽけな自分がみにくく思われて、かなしい気持ちになっていました。
ところがある日、山小屋で火事がおこります。険しく細い山道を登れるのは、ジープのじぷただけです。じぷたは夢中で飛び出します。もう誰も笑いません。そしてじぷたの活躍で、火は消しとめられ、なんとか山火事を免れたのでした。それからというもの、子どもたちはじぷたを見ると、必ず指をさしてこう言うようになりました。
「やあ、じぷたがいるぞ! ちびっこでも すごく せいのうが いいんだぞ!」
渡辺さんは、じぷたに、「クラスで一番小さくて、虚弱児だった」子どものころの自分を重ねたそうです。渡辺さんは、消防自動車のえほんを書こうと思ったとき、図書館や消防署や消防車の製造工場に出向いては、消防車のことを調べました。けれどもいざ書いてみると、何度書いても、なんだか調査結果のレポートのようで、ちっともおもしろくなりませんでした。がっかりして、しばらく手をつけずに放っておいたとき、たまたま消防の出初式にでかけ、消防車のデモンストレーションをみたのです。真っ赤な体をキラキラ光らせたはしご車やポンプ車などの花形消防車たちが、堂々と走り回っている横で、会場の片隅に、米軍の払い下げのジープを改良した、小さい小さい消防車が黙って停まっているのを見たのです。とたんにあんなに書けなかった物語が、渡辺さんの中で、生き生きと動き出しました。こうして「しょうぼうじどうしゃ じぷた」が生まれたのです。 「じぷた」とは「ジープ」と渡辺さんのご長男の名前を合わせたものだそうです。